今日は「V-Ray Override Material」について解説します。
CGパースを制作していて、とてもよく言われるのが、
床が暗いデザインなのに「天井をもっと明るくして!」というオーダー。
実際にはそんなに明るくなるわけないよ。と思いながらも、
絵的に明るく見せたいという不条理なオーダーに応えられるのが、
「V-Ray Override Material」です。
というよりも空間全体が明るくなります。
「V-Ray Override Material」とは?
「V-Ray Override Material」は、レンダリング時の「間接照明(GI)」・「反射」・「屈折」・「影」の各計算に対して、
本来のマテリアルとは違う、別のマテリアルを個別に指定できる特殊なマテリアルです。
今回の例では「間接照明」の計算に別のマテリアルを使用しています。
つまり、
・「間接照明(GI)」の計算には、白いマテリアル
という設定を行っています。
ですので、床が何色であっても床からの光の反射(間接照明)の計算には
「白色」の光の反射が用いられるので、
空間全体が明るくなり、結果的に天井面も明るくなります。
「V-Ray Override Material」の使い方
「V-Ray Override Material」は光の計算を置き換えたいマテリアルに対して設定します。
今回の例では、床のポリゴンに「Floor」というマテリアルタグを割り当てていますので、
「Floor」に対して、「V-Ray Override Material」を追加します。
「V-Ray Override Material」を適用したいマテリアルグループを選択し、
(今回の場合は「Floor」)
「シェーダツリー」の「レイヤー追加」より、
「V-Ray Materials」→「V-Ray Override Material」を選択して追加します。
追加した「V-Ray Override Material」は、マテリアルグループの中の一番上になるように、移動します。
次に「V-Ray Material」を一つ追加します。
このマテリアルはどこに作成してもよいのですが、
とりあえず同じ「Floor」のマテリアルグループの中に作成します。
作成した「V-Ray Material」は「V-Ray Override Material」より下層になるように配置します
追加した「V-Ray Material」の名称を、わかりやすいように「White」に変更しておきます。
また、床の本来の「V-Ray Material」の名称もわかりやすいように「Floor」に変更しておきます。
「V-Ray Override Material」を選択してプロパティパネルで以下の通り設定します。
・「GI material」→「White」
「GI material」は「間接照明(GI)」の計算に使われるマテリアル。
という設定を行いました。
シェーダツリーで設定しているテクスチャは無視されてしまいます。
今回の例では、「Base material」となる「Floor」の上に、
タイルカーペットのイメージマップを乗せて設定していますが、
この情報は「V-Ray Override Material」には伝わりません。
なぜならば、「Base material」に設定したのは「Floor」というマテリアルだけだからです。
マテリアルに直接「つなぐ」という考え方です。
スケマティックでノードをつなぐ
画像の通り、スケマティックを表示して、
「V-Ray Override Material」をスケマティックへ放り込みます。
「Base material」の左横にある「黄色の◇」をダブルクリックします。
すると「Base material」につながっている「Floor」のマテリアルが表示されます。
自分でつないだ覚えはありませんが、
先ほど「Base material」に「Floor」を設定したことによって、
自動的につなげられています。
次に、タイルカーペットの「イメージマップ」もスケマティックへ追加します。
追加したタイルカーペットの「イメージマップ」の「テクスチャ色」を、
「Floor」マテリアルの「Diffuse Color」へつなぎます。
バンプマップに関しては、今回は同じ画像を使いまわしていますので、
同じ「イメージマップ」の「テクスチャ値」を「Bump Value」へとつなぎます。
レンダリングしてみましょう。
きちんと床のタイルカーペット柄がレンダリングされていますね!
ちなみに「White」のマテリアルに関しては、何も設定をいじっていませんが、
「Diffuse Color」を「1.0」の真っ白にすると、もっと空間が明るくなります。
いいさじ加減の値を探って、空間の明るさを調整してください。
「V-Ray」で特殊なことをする際には、
「MODO」の「シェーダツリー」という「レイヤーベース」の概念ではなく、
「ノードベース」という考え方が必要になります。
また、障子のような薄っぺらい表現をするための、
「V-Ray 2-Sided material」に対してテクスチャを設定したい場合も、
今回と同じように、テクスチャを「ノードでつなぐ」という作業が必要です。